こども食堂やまびこ開催レポート

~カレーとコーヒーと、まんなかにあるもの~
令和7年6月28日、梅雨明けしたばかりの青空の下、「こども食堂やまびこ」が開催されました。会場となったのは、有田川町の清水地域。山と川に囲まれた、どこか懐かしさの残る場所です。
私は今回、地域のつながりを育てる「ありだで暮らそうネットワーク」の一員として、こども食堂に参加しました。とはいえ、ボランティアというより、“自分も一緒にやってみる”ことが目的。コーヒーを淹れながらおしゃべりする「but first coffee~まぁコーヒー飲んでからにするけ~」という企画も一緒に行いました。
こうして迎えた当日。
はじめての開催に、少しだけ緊張しながら、わくわくする気持ちもいっぱいでした。

はじまりの時間
朝早くから会場では準備が始まっていて、カレーのいい匂いが漂いはじめるころには、テーブルや卓球台、ボードゲームの用意も整っていきました。
「いらっしゃいませ!」
11時ぴったり、最初のお客さんが来てくれた時は、心の中で思わずガッツポーズ。
“誰も来なかったらどうしよう…”と心配していたのが嘘みたいに、次々と地域の方々が訪れてくれました。
12時には、いよいよ食事の提供。カレーとサラダにスイカ。限られたスペースの中、みんなが譲り合いながら席につく姿が印象的でした。

「まぁ、コーヒーでも飲んでいってよ」
食事が終わったあとは、私たちの出番。
「もう帰ろうか」としていた方々に、「まぁ、コーヒーでも飲んでいってよ」と声をかけると、
「えっ、コーヒーあるの?」と笑顔が返ってきます。
コーヒーを淹れている間、自然と会話が生まれ、思わぬつながりができたり。
そんなひとときが、まるで“縁側でひと休み”するような、ゆるやかであたたかい時間になっていました。

ありがとうの意味
食事を提供してくれたのは、やまびこ作業所のメンバーさんたち。
ふだんは自分たちが作って、自分たちが一番に食べる。でもこの日は違いました。
“してもらう”立場だった人たちが、“してあげる”側にまわる体験。
その中で聞こえてきた「ありがとう」という言葉には、どこか特別な響きがありました。
“有ることが難しい”からこその、ありがとう。
この場所で、たくさんの「ありがとう」が行き交った気がします。

こども食堂のこれから
和歌山県では、故・岸本知事のもと、こども食堂を「子どもだけのため」ではなく「多世代がつどう地域の場」として広げる取組が進められてきました。
県内すべての小学校区に1か所の設置を目指し、補助金やネットワーク支援も整備され、多くの地域でこども食堂が生まれました。
でも今回の開催地・清水地域は、そもそも子どもの数が少ない地域です。
それでも、開催してみて見えてきたものがありました。
子どもも大人も、お年寄りも、障がいのある人も、スタッフも、
カレーを食べて、コーヒーを飲んで、話して、笑って――
そんな当たり前の光景が、清水のまんなかに、ちゃんとありました。

さいごに、問いかけます。
「こども食堂」って、子どもがたくさん集まらないと、意味がないのでしょうか?わたしたちが大切にしたい“居場所”とは、数字では測れない何か――なのかもしれません。
