令和7年6月6日金曜日 有田川町役場2階小会議室にて、委託相談事業所及び特定相談事業所である“有田地域生活支援センターつくし”にご参加頂き「相談支援事業所 成長戦略会議」を開催しました。
本会議は、有田川町及び圏域における相談支援の現状を行政と事業所で共有し、持続可能な相談支援体制の構築に向けた具体的な方策を検討・実行していくことを目的として開催しました。
当日は以下のような内容について意見交換を行いました。
- 委託相談・特定相談を実施している事業所の業務量増加に伴う課題と対応策
- 地域生活支援拠点における、複数事業所による協働体制の構築に向けた取り組み
- 圏域全体で相談支援体制を整備していくうえでの課題の整理と今後の方向性
現場での課題を率直に出し合いながら、行政と相談支援事業所が連携し、それぞれの立場からできることを持ち寄っていくことを改めて確認しました。
行政と事業所が互いの役割と視点を尊重し合い、「いま、目の前にある課題にどう向き合うか」を共に考える機会となりました。
今後もこうした対話の場を継続し、現場に根差した実効性ある取り組みへとつなげていけるよう、関係機関との連携をさらに深めていきます。

参加者:社会福祉法人 有田つくし福祉会 中山事務長、有田地域生活支援センターつくし 澄田センター長、有田川町役場やすらぎ福祉課 福本課長、及び事務担当者
相談支援事業所の業務実態と改善策に関する報告書
~厚生労働省「相談支援事業所及びその従業者の業務実態把握及び今後のあり方に関する調査研究(令和3年度)」より~
以下は、厚生労働省の報告書「相談支援事業所及びその従業者の業務実態把握及び今後のあり方に関する調査研究」(令和3年度)を基に、相談支援事業所の業務負担の現状と課題、そして具体的な改善策をまとめた報告です。
詳細については、下記リンクから原文をご確認いただけます。
👉厚生労働省報告書PDF(令和3年度)
1. 調査の目的と方法
本調査は、全国の相談支援事業所を対象として、相談支援専門員の業務実態を明らかにし、今後の制度改善や支援体制のあり方を検討するために実施されました。
- 調査方法:全国の事業所を対象としたタイムスタディ調査およびヒアリング調査を併用。
2. 業務負担の現状と課題
2.1 業務時間の実態
調査結果によると、相談支援専門員の1日あたりの平均業務時間は約537.6分(約8時間58分)に上り、そのうち個別相談支援に関わる時間は307.0分(約5時間7分)、全体の57.1%を占めていました。
一方で、個別ケース以外の業務(関係機関連携、記録業務、移動、会議等)にも平均で37.1分(約6.9%)が費やされており、多様な業務に対応している実態が浮き彫りになっています。
2.2 業務負担の増加要因
業務の負担が増している背景には、以下の要素が指摘されています:
- 業務の多様化:相談支援専門員は、サービス等利用計画の作成だけでなく、医療機関との連携、受診支援、地域移行・定着支援など、複数分野にまたがる業務を日常的に担っています。
- 書類作成の比重の高さ:サービス等利用計画やモニタリング記録などの書類作成に膨大な時間がかかり、対人援助に割ける時間が圧迫されています。
- ICT活用の遅れ:オンライン会議の活用は増えているものの、個別支援や記録業務におけるICT導入・活用はまだ道半ばです。
3. 業務負担軽減に向けた具体的な改善策
3.1 業務の効率化:ICTの活用促進
業務の合理化・効率化を進めるうえで、ICTの導入は欠かせません。以下のような具体策が推奨されます:
- 電子記録システムの導入
業務記録やサービス等利用計画を電子化することで、書類作成の手間を大幅に軽減できます。 - オンライン会議の定着化
多機関とのケース会議やモニタリングをオンライン化することで、移動時間や調整負担を削減し、効率的な連携が可能になります。 - ICTスキル研修の実施
現場職員がツールを活用しきれないという課題を解消するため、研修やマニュアル整備による習熟支援を行う必要があります。
3.2 連携強化:地域ネットワークの再構築
相談支援体制の質を高めるには、関係機関との連携強化が不可欠です。以下のような方策が有効とされます:
- 地域連携会議の定期開催
医療機関、行政、福祉事業者が一堂に会し、相談支援の在り方や個別課題について継続的に共有する場を設けます。 - 地域支援ネットワークの構築
情報共有や緊急時の連携が可能となるネットワーク(名簿・連絡体制)を地域内に整備します。 - 役割分担と可視化の推進
多職種間の役割を明確にし、支援者間の連携や負担分散を促進するガイドラインやフローを整備します。
4. おわりに
本調査は、相談支援の現場で働く専門職が直面している「見えにくい負担」を可視化し、構造的な課題として認識させる貴重な資料となっています。
現場の声を制度改善に反映し、ICT導入や多機関連携を通じて実効性ある相談支援体制を築くことが今、強く求められています。今後も継続的な実態調査と改善のサイクルを通じ、支援者が力を発揮できる環境づくりを進めていく必要があります。