令和7年4月15日 よりそいネットワーク会議

(会場:きび保健福祉センター)

ピアサポーターと地域活動支援センターの今とこれから

 

「安心して暮らせる地域」をどうつくる?

ピアサポーターと地域活動支援センターの今とこれから

令和7年4月15日、「よりそいネットワーク会議」において、医療法人宮本病院 地域活動支援センター櫻の相談支援専門員である中野千世氏・片野田順子氏をお招きし、講演会を開催しました。

今回のテーマは「安心して暮らせる地域をどうつくるか」。講演では、ピアサポートとは何か、ピアサポーターとはどのような存在かについての基礎的な説明から始まり、精神障がい者によるピアサポート活動の歴史や、ピアサポートが果たす役割について、実践例を交えながら具体的に語られました。
また、和歌山県内におけるピアサポーター活動の展開、地域活動支援センター櫻でのピア活動の様子、地域活動支援センターの基本的な機能や委託相談支援事業との関係性、さらにはピアサポーターと協働して行っている支援の事例など、現場の息遣いが感じられる90分間の充実した内容でした。

講演の最後には、「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About Us Without Us)」という、障害者権利条約の成立過程で広まったスローガンが紹介されました。この言葉は、当事者主体の支援や、地域活動支援センター・ピアサポートの理念そのものであり、多くの参加者の心に響きました。

現在、有田圏域では地域活動支援センターの設置に向けた取り組みが始まっています。今回の講演会で得た学びと、参加者同士の新たなつながりを大切にしながら、「有田で暮らす」人々にとって本当に必要とされる支援の形を模索していきます。


ピアサポートと地域活動支援センターの全国的な現状

近年、精神障がい当事者によるピアサポート活動は、全国で少しずつ広がりを見せています。厚生労働省によると、令和4年度時点で全国に約1,200名のピアサポーターが養成されており、そのうち約400名程度が地域での支援活動に何らかの形で関与しているとされています(都道府県によって制度化の度合いには差があります)。

ピアサポートの重要性は、国の障害福祉計画の中でも繰り返し言及されており、「当事者の声を活かした地域づくり」や「共に生きる社会の実現」に不可欠な要素と位置づけられています。特に精神障がい分野では、回復(リカバリー)モデルとの親和性が高く、セルフヘルプグループや地域活動支援センターを基盤とした活動が展開されています。

一方、地域活動支援センター(Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型)は、厚労省の報告書によると、令和5年度時点で全国に約4,000か所が設置されていますが、その機能や運営形態は地域によって大きく異なり、特にピアサポーターとの連携を意識した運営が行われている例はまだ限られています。

現在、多くの自治体で地域活動支援センターの再定義や再編が進められており、「交流・つながり・参加の場」から「包括的な支援拠点」への進化が求められています。そうしたなかで、ピアサポートと連携した新たな運営モデルや人材育成の仕組みづくりが期待されています。